日本が赤字国債でつぶれないワケ
来年はアメリカ合衆国大統領選挙です。これまでに無い強硬な手腕で、外交政策を押し進めてきたトランプ政権の支持が続くのか、それとも民主党政権に移行するのか、非常に興味深いところです。
そんな中、トランプ政権を批判する民主党の最若手議員、アンドレア・オカシオ・コステス外院議員が指示したことで有名になった、MMT理論(現代貨幣理論)。今回はその代表国といえる我が国をモデルに、わかりやすく解説してみます。
■日本の借金1105兆円でも、問題は金額じゃない
財務省が発表する「国の借金」は、2018年度末でおおよそ1105兆円となっています。(長期国債債務残高の国・地方合計/財務省資料より)
わが国財政の現状等について(財務省)より
数年前、国の借金が1000兆円を超えた、と話題になりました。国民一人当たりに換算するといくらだとか、世界の中でもトップクラスの借金大国だとか、キャッチーな話題は数多くありましたが、「そもそも日本は誰から借入れをしているか」ご存じでしょうか。
実は日本の借金は、国内から借入をしています。
日本の国債(=ここでは、国の借金だと考えてください)は、約88%を「国内」で保有しているのです。
これは例えば、ある家庭の借金額が1105万円だとして、その88%が「家庭内」で貸し借りしている状態を指します。お父さん(国)が、「家を建てたい」などといって、同じ家族であるおじいさん(国内)に、毎年いくらかお金を借り続けています。そうしてできたおじいさんへの借金の額が累積で972万円あり、他に親しい知人(海外)から、133万円借りているという状況です。
国の借金の話をするときは、「累積金額」だけがピックアップされることが多いのですが、実は「貸してもらっている相手」こそが重要なポイントなのです。
「国内」の中で最も多く国債を持っているのは日本銀行で約47%、続いて生損保険会社等が約21%、銀行等が約15%の順になっています。
■家族間での借金は、誰のもの?
借金をしている相手がおじいさんの場合、その債務はやがて相続されお父さん自身の債務となります。これは国の借金をひとつの家族で例えた話ですが、イメージとしては現在の日本の借金事情そのものです。
家族間で借金をしている場合、5年10年の単位で考えればそれは「借金」なのですが、100年以上といった家系単位で考えた場合、いずれは自分の財産になる相続財産を借入(前借り)しているに過ぎません。会社の友人、つまり「海外」から借り入れをしているのとは、事情が全く異なるのです。
■日本の、収入と支出の現状
お父さんは会社の知人への返済はもちろん、おじいさんへの借金もきちんと約束の期日に、約束した額を返し続けています。ただ、お父さんの収入から生活に必要な支出額を除くと、
借金を返すお金が足りないどころか、生活費自体も足りない状態。ですから、生活費の不足分と借金の返済をするために、新たに借金している、という状態です。
(ただし、新たに借金をしている相手は、これまた家族である、おばあさんであったりするのですが・・・)
財務省ホームページより
どうしてお父さん(国)が収入(税収)だけでやっていけないのか、その理由は財務省のホームページで確認することができます。一般会計歳出(国の支出)を見ると、支出の1/3が社会保障関連になっていることがわかりますね。社会保障関連の費用が近年膨らみ続けていて、話題になっています。
図を先ほどのお父さんの例に置き換えると、お父さんの収入は62万円ですが、生活費に78万円掛かっているという状態です。そして、足りない16万円と、おじいさんと知人への借金返済額24万円を、さらに借金をして支払っている、というわけです。
先ほどから借金という言葉を連呼していますが、借金は、借り手が貸し手へ「利息」を払います。お父さんがおじいさんへ、利息を払っている構図になります。おじいさんが得た利息は、孫へのこづかいや教育費の援助になっているのも事実です(文教及び科学復興費)。
家族間でのお金の貸し借りを「家系の存続」を考えるほどの長期間で見た場合、それほど「借りる」行為が悪いのかと改めて問うと、皆さんいかがでしょうか?
■忘れてはいけない、税金と日本銀行の存在
「日本は借金大国だから、このままでは破綻する」という意見に反論できる材料は、まだ他にもあります。
「いくら家族間の貸し借りだからといって、家計が赤字ではいずれ破綻する」と思われている方がいるかもしれませんので、話を整理しましょう。
国の会計で、収入の主たる源泉はなんでしたか?そう、税金です。お父さん(国)はおじいさんを含めた一族(国民)に対して、税金をかける権利がありあます。もちろん勝手に決定できるものではありませんが、国会(家族に置き換えると家族会議、でしょうか)で議論したうえで、税率を上げる決定をすることができます。
また、国債は「債券」なのですが、返済の為の通貨は日本円です。日本円は日本銀行が発行することができます。日本国債の最も多い保有者が誰であったか、冒頭で説明したのを覚えていますか? そう、日本銀行です。
最悪、借金の返済に行き詰まってしまった場合、日本銀行はお金を刷ることができるのです。極端な話ですが、お金をたくさん刷って返済に当てれば、借金の返済は完了します。
実際にはそのようなことをすると、大きなインフレーションが起こってしまうので現実的ではないものの、「日本が、借金が原因で破綻する」という定義が通らないことが、お分かりでしょうか。
■まとめ
今回はあくまでも「借金によって日本が破綻するのか」という点で考えましたが、問題は借金の有無ではなく、物価が安定し、国民が明るい将来を描き、幸せに暮らせるのかということです。
今後も増え続ける社会保険料や人口減少の問題に対して必要な政策をとるとしても、その政策や国を守るために借金が膨らみ続け、「国債の返済で破綻」することがなかったとしても、国が貧弱になっては本末転倒です。
結局生活を豊かにするには、日本の経済を強化し、国民の個人資産を増やすしかないと筆者は考えます。私たち個人にできることは、借金の額を考えることではなく、なるべく政府に頼らず、今も老後も、自分自身の資産と収入で、生活できる環境をつくることだと考えます。
そんな中、トランプ政権を批判する民主党の最若手議員、アンドレア・オカシオ・コステス外院議員が指示したことで有名になった、MMT理論(現代貨幣理論)。今回はその代表国といえる我が国をモデルに、わかりやすく解説してみます。
■日本の借金1105兆円でも、問題は金額じゃない
財務省が発表する「国の借金」は、2018年度末でおおよそ1105兆円となっています。(長期国債債務残高の国・地方合計/財務省資料より)
わが国財政の現状等について(財務省)より
数年前、国の借金が1000兆円を超えた、と話題になりました。国民一人当たりに換算するといくらだとか、世界の中でもトップクラスの借金大国だとか、キャッチーな話題は数多くありましたが、「そもそも日本は誰から借入れをしているか」ご存じでしょうか。
実は日本の借金は、国内から借入をしています。
日本の国債(=ここでは、国の借金だと考えてください)は、約88%を「国内」で保有しているのです。
これは例えば、ある家庭の借金額が1105万円だとして、その88%が「家庭内」で貸し借りしている状態を指します。お父さん(国)が、「家を建てたい」などといって、同じ家族であるおじいさん(国内)に、毎年いくらかお金を借り続けています。そうしてできたおじいさんへの借金の額が累積で972万円あり、他に親しい知人(海外)から、133万円借りているという状況です。
国の借金の話をするときは、「累積金額」だけがピックアップされることが多いのですが、実は「貸してもらっている相手」こそが重要なポイントなのです。
「国内」の中で最も多く国債を持っているのは日本銀行で約47%、続いて生損保険会社等が約21%、銀行等が約15%の順になっています。
■家族間での借金は、誰のもの?
借金をしている相手がおじいさんの場合、その債務はやがて相続されお父さん自身の債務となります。これは国の借金をひとつの家族で例えた話ですが、イメージとしては現在の日本の借金事情そのものです。
家族間で借金をしている場合、5年10年の単位で考えればそれは「借金」なのですが、100年以上といった家系単位で考えた場合、いずれは自分の財産になる相続財産を借入(前借り)しているに過ぎません。会社の友人、つまり「海外」から借り入れをしているのとは、事情が全く異なるのです。
■日本の、収入と支出の現状
お父さんは会社の知人への返済はもちろん、おじいさんへの借金もきちんと約束の期日に、約束した額を返し続けています。ただ、お父さんの収入から生活に必要な支出額を除くと、
借金を返すお金が足りないどころか、生活費自体も足りない状態。ですから、生活費の不足分と借金の返済をするために、新たに借金している、という状態です。
(ただし、新たに借金をしている相手は、これまた家族である、おばあさんであったりするのですが・・・)
財務省ホームページより
どうしてお父さん(国)が収入(税収)だけでやっていけないのか、その理由は財務省のホームページで確認することができます。一般会計歳出(国の支出)を見ると、支出の1/3が社会保障関連になっていることがわかりますね。社会保障関連の費用が近年膨らみ続けていて、話題になっています。
図を先ほどのお父さんの例に置き換えると、お父さんの収入は62万円ですが、生活費に78万円掛かっているという状態です。そして、足りない16万円と、おじいさんと知人への借金返済額24万円を、さらに借金をして支払っている、というわけです。
先ほどから借金という言葉を連呼していますが、借金は、借り手が貸し手へ「利息」を払います。お父さんがおじいさんへ、利息を払っている構図になります。おじいさんが得た利息は、孫へのこづかいや教育費の援助になっているのも事実です(文教及び科学復興費)。
家族間でのお金の貸し借りを「家系の存続」を考えるほどの長期間で見た場合、それほど「借りる」行為が悪いのかと改めて問うと、皆さんいかがでしょうか?
■忘れてはいけない、税金と日本銀行の存在
「日本は借金大国だから、このままでは破綻する」という意見に反論できる材料は、まだ他にもあります。
「いくら家族間の貸し借りだからといって、家計が赤字ではいずれ破綻する」と思われている方がいるかもしれませんので、話を整理しましょう。
国の会計で、収入の主たる源泉はなんでしたか?そう、税金です。お父さん(国)はおじいさんを含めた一族(国民)に対して、税金をかける権利がありあます。もちろん勝手に決定できるものではありませんが、国会(家族に置き換えると家族会議、でしょうか)で議論したうえで、税率を上げる決定をすることができます。
また、国債は「債券」なのですが、返済の為の通貨は日本円です。日本円は日本銀行が発行することができます。日本国債の最も多い保有者が誰であったか、冒頭で説明したのを覚えていますか? そう、日本銀行です。
最悪、借金の返済に行き詰まってしまった場合、日本銀行はお金を刷ることができるのです。極端な話ですが、お金をたくさん刷って返済に当てれば、借金の返済は完了します。
実際にはそのようなことをすると、大きなインフレーションが起こってしまうので現実的ではないものの、「日本が、借金が原因で破綻する」という定義が通らないことが、お分かりでしょうか。
■まとめ
今回はあくまでも「借金によって日本が破綻するのか」という点で考えましたが、問題は借金の有無ではなく、物価が安定し、国民が明るい将来を描き、幸せに暮らせるのかということです。
今後も増え続ける社会保険料や人口減少の問題に対して必要な政策をとるとしても、その政策や国を守るために借金が膨らみ続け、「国債の返済で破綻」することがなかったとしても、国が貧弱になっては本末転倒です。
結局生活を豊かにするには、日本の経済を強化し、国民の個人資産を増やすしかないと筆者は考えます。私たち個人にできることは、借金の額を考えることではなく、なるべく政府に頼らず、今も老後も、自分自身の資産と収入で、生活できる環境をつくることだと考えます。