資産運用は難しいものなのか?年代ごとに考えてみる
日ごろの業務において、最も多い相談内容がズバリ、「お金が貯まらないので何とかしたい」です。お金を貯めたいその理由、圧倒的1位は「老後の資産形成」。
私の元を訪れる相談者は女性が多いのですが、年齢は20代前半~50代後半までと様々な中、今回は20代・30代・40代の3通りで、ファイナンシャルプランナー/ファイナンシャルアドバイザーである私が考える、お金の貯め方や考え方を書いてみたいと思います。
■インフレを計算に入れて考える。「金額」ではなく「価値」が重要
まず、どの年代にも共通して言えることですが「お金は貯めるものではなく、作るもの」という概念です。
自営業者以外の多くの人は、収入の源泉が「会社からお給料をもらう」のみであるせいか、「お金は作る・増やす」ものだという考え方を持つには、至らないように思います。
この考え方にシフトしてもらうのは、言葉で語るほど、そう容易ではありません。
ここから本題に入りますが、多くの人は「現在の金額」でその価値を決めようとされます。しかし、お金の価値は変動します。これはとても大切なポイントです。
大きな要因はインフレ(インフレーション)による「物価上昇+お金の価値が下落する」事ですが、日本は長きにわたってデフレ(デフレーション)の時代でしたので、今イチ実感がわかない、という方が多く、無理もありません。
しかし実際にはインフレは起きていて、例えば東京ディズニーランドのワンデーパスポートを例に挙げてみますと、2006年は5,800円だったものが、2018年現在では7,400円と、1.27倍になっています。同時期の高速道路の通行料金も、1.35倍に上がっているというデータもあります。
(総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果」より2006年の高速自動車国道料金が1万円の区間で、消費者物価指数結果を基に2016年の高速自動車国道料金をアクサ生命が計算)
生産性の向上やコストダウンにより、将来、生活の身の回りのものすべてが価格上昇するとは言い切りませんが、これまで同様にインフレがわずかながらでも起これば、いま皆さんが銀行預金で眠らせているお金は、その価値が消耗していくでしょう。
マイナス金利時代、預金でお金を「貯める」思考を「増やす」思考へシフトしなければ、「現在の預金の価値」を守ることが難しくなるのは明らかです。
■20代は時間が味方・・・まずはスタートすることが重要
20代であれば、まず「時間」を味方につけた方法でお金を増やすべきでしょう。時は金なり、と格言があるように、投資や運用の世界において「時間」はそれそのものが財産となります。
なぜなら同じ金融商品でも、運用期間が増えるにつれて、価格のブレ(ボラティリティーという事もあります)が狭まるからです。
将来にわたって、資金を増やす時間がたくさんある、ということは、ビギナーズラックのような短期間で大きくリターンを得ることを考える必要は無いので、時間をかけてリスクを減らしながら、資産を積み増し、全体の「総量」で将来への資産形成を考えればよいのです。
ですから、よく「まだ勉強不足だから・・・」と運用のスタートを先延ばしにする方がいますが、大変もったいないと思います。先延ばしにする分だけ、時間の損失(機会損失)を生んでいることに気づくべきです。
仮に失敗したとしても、取り戻すのに時間は十分あるのですから、少々の失敗を恐れることなく、とりあえず「やってみる」という心持が大切です。
何より、始めた人の失敗から学べることは、初めてもいない人が他人から得る知識より、はるかに意味があります。
あくまでも参考ですが、以下の仕分けで始めてみるプランを立てると良いでしょう。
*月々積立での運用:1万円×約40年
*NISAの活用:まとまった資金(50万円~100万円)で株式運用を始める
*iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入:毎月1万円×約40年
制度の簡単な説明になりますが、NISAは運用益が非課税になる制度で、税金の心配をすることなく、利益を100%受け取れる制度です。「貯金から投資へ」と、政府が投資初心者を後押しする制度ですので、ぜひ活用してください。
また、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、年間で運用に拠出した全額を、所得から控除できる制度です。所得が少なくなるという事は、所得税・住民税も少なくなります。
60歳(今後65歳以上になる可能性もある)まで原則引き出しができないという条件さえ了承できるのであれば、活用すべき制度とオススメできます。
■30代は家計のやりくりと調整・・・先送りしないことが大切
30代は基本的に、20代と同じ手法・心持と考えて良いのですが、既婚者や子供のいる家庭の場合は、教育費や生活費の支出とのすり合わせを考慮しなければなりません。
20代であれば、あまり先のことを考えずにとにかく「始めてみる」という事が大切でしたが、30代であればある程度の計画性を持って始める必要が出てくるかもしれません。(逆に言えば、20代であれば凝った計画はそれほど必要ではない、という事です)
家計を診断し、収入と支出のバランスを確認したうえで、さらに子供のいる家庭の場合は今後の教育費の計画も視野にいれ、継続可能なプランを算出する必要があります。
ここで多くの方が陥る事ですが「できない理由」を探すのではなく「どうしたらできるのか、いつならできるのか」を、明確にする事です。
やはりこの年代でも、先送りすることは賢明ではありませんので、これは私の口癖ですが「できることを、できる限り、できる時にやる」という心持で行動してください。
20代のころよりも収入が増えているケースが多いと思われますので、以前より節税効果を考慮した運用制度を使うのがよいでしょう。
*月々積立での運用:2万円×約30年・・・教育資金にも充当可
*NISAの活用:まとまった資金(50万円~100万円)で株式運用を始める
*iDeCoに加入:毎月2万円(もしくは満額)×約30年
■40代はまったなし・・・まとまった資金は有効活用を行う
40代の場合は、時間軸で見た場合、より運用を真剣に考える必要があります。
20代や30代のころより、まとまった資産を持っている方が多いので、その分投資未経験者は「一歩踏み出す」のに躊躇される方がいますが、リスクテイク(リスクをとってリターンを得る)を行わない方が、むしろ「リスク」であることを、再認識すべきです。
預金で置いて置くよりはマシ、という理由で、外貨での一時払の保険商品に、銀行や保険会社が勧められるままに加入される方を多く見られますが、一括での外貨のみでの運用は、ベストな選択とは言いがたいところです。外貨は成長資産ではないからです。
この年代では、保有資産額と毎月のキャッシュフローによって、提案が大きく異なりますが、いずれの場合でも成長資産である株式を、50%程度はポートフォリオに組むべきでしょう。
40代とはいっても、現役世代がこれまで「60歳定年」であったところ、今後現役で仕事を続けられる年齢が70歳や、定年という概念がなくなるような将来を考えれば、十分に時間はあります。
また、変化のスピードが速い時代ですから、積極的に情報を取得し、学ぶ姿勢の必要性は、20代・30代となんら変わりありません。
今後、iDeCoの運用期間が60歳以上へ引きあがることを考慮すれば、40歳からでもiDeCoの活用は十分に有効です。
*月々積立での運用:2万円×約20年
*NISAの活用:まとまった資金(100万円~500万円)で株式購入
*10年以内の運用:まとまった資金(100万円~500万円)により債券などで株式よりも安定した資産を作る
*iDeCoに加入:毎月2万円(もしくは満額)×約20年
20代・30代・40代いずれの場合も、自分の資産は自分でつくるという考えを持つことに、変わりはありません。
また、お金という概念が今後20年以降、今と同じ性質や意味を持つかどうかは分かりません。「現預金」以外の資産に変えておくことの他、これまでの固定概念が変わるとき、フットワークよく動けるように、日々経済の動きを見る習慣をつけておきましょう。
私の元を訪れる相談者は女性が多いのですが、年齢は20代前半~50代後半までと様々な中、今回は20代・30代・40代の3通りで、ファイナンシャルプランナー/ファイナンシャルアドバイザーである私が考える、お金の貯め方や考え方を書いてみたいと思います。
■インフレを計算に入れて考える。「金額」ではなく「価値」が重要
まず、どの年代にも共通して言えることですが「お金は貯めるものではなく、作るもの」という概念です。
自営業者以外の多くの人は、収入の源泉が「会社からお給料をもらう」のみであるせいか、「お金は作る・増やす」ものだという考え方を持つには、至らないように思います。
この考え方にシフトしてもらうのは、言葉で語るほど、そう容易ではありません。
ここから本題に入りますが、多くの人は「現在の金額」でその価値を決めようとされます。しかし、お金の価値は変動します。これはとても大切なポイントです。
大きな要因はインフレ(インフレーション)による「物価上昇+お金の価値が下落する」事ですが、日本は長きにわたってデフレ(デフレーション)の時代でしたので、今イチ実感がわかない、という方が多く、無理もありません。
しかし実際にはインフレは起きていて、例えば東京ディズニーランドのワンデーパスポートを例に挙げてみますと、2006年は5,800円だったものが、2018年現在では7,400円と、1.27倍になっています。同時期の高速道路の通行料金も、1.35倍に上がっているというデータもあります。
(総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果」より2006年の高速自動車国道料金が1万円の区間で、消費者物価指数結果を基に2016年の高速自動車国道料金をアクサ生命が計算)
生産性の向上やコストダウンにより、将来、生活の身の回りのものすべてが価格上昇するとは言い切りませんが、これまで同様にインフレがわずかながらでも起これば、いま皆さんが銀行預金で眠らせているお金は、その価値が消耗していくでしょう。
マイナス金利時代、預金でお金を「貯める」思考を「増やす」思考へシフトしなければ、「現在の預金の価値」を守ることが難しくなるのは明らかです。
■20代は時間が味方・・・まずはスタートすることが重要
20代であれば、まず「時間」を味方につけた方法でお金を増やすべきでしょう。時は金なり、と格言があるように、投資や運用の世界において「時間」はそれそのものが財産となります。
なぜなら同じ金融商品でも、運用期間が増えるにつれて、価格のブレ(ボラティリティーという事もあります)が狭まるからです。
将来にわたって、資金を増やす時間がたくさんある、ということは、ビギナーズラックのような短期間で大きくリターンを得ることを考える必要は無いので、時間をかけてリスクを減らしながら、資産を積み増し、全体の「総量」で将来への資産形成を考えればよいのです。
ですから、よく「まだ勉強不足だから・・・」と運用のスタートを先延ばしにする方がいますが、大変もったいないと思います。先延ばしにする分だけ、時間の損失(機会損失)を生んでいることに気づくべきです。
仮に失敗したとしても、取り戻すのに時間は十分あるのですから、少々の失敗を恐れることなく、とりあえず「やってみる」という心持が大切です。
何より、始めた人の失敗から学べることは、初めてもいない人が他人から得る知識より、はるかに意味があります。
あくまでも参考ですが、以下の仕分けで始めてみるプランを立てると良いでしょう。
*月々積立での運用:1万円×約40年
*NISAの活用:まとまった資金(50万円~100万円)で株式運用を始める
*iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入:毎月1万円×約40年
制度の簡単な説明になりますが、NISAは運用益が非課税になる制度で、税金の心配をすることなく、利益を100%受け取れる制度です。「貯金から投資へ」と、政府が投資初心者を後押しする制度ですので、ぜひ活用してください。
また、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、年間で運用に拠出した全額を、所得から控除できる制度です。所得が少なくなるという事は、所得税・住民税も少なくなります。
60歳(今後65歳以上になる可能性もある)まで原則引き出しができないという条件さえ了承できるのであれば、活用すべき制度とオススメできます。
■30代は家計のやりくりと調整・・・先送りしないことが大切
30代は基本的に、20代と同じ手法・心持と考えて良いのですが、既婚者や子供のいる家庭の場合は、教育費や生活費の支出とのすり合わせを考慮しなければなりません。
20代であれば、あまり先のことを考えずにとにかく「始めてみる」という事が大切でしたが、30代であればある程度の計画性を持って始める必要が出てくるかもしれません。(逆に言えば、20代であれば凝った計画はそれほど必要ではない、という事です)
家計を診断し、収入と支出のバランスを確認したうえで、さらに子供のいる家庭の場合は今後の教育費の計画も視野にいれ、継続可能なプランを算出する必要があります。
ここで多くの方が陥る事ですが「できない理由」を探すのではなく「どうしたらできるのか、いつならできるのか」を、明確にする事です。
やはりこの年代でも、先送りすることは賢明ではありませんので、これは私の口癖ですが「できることを、できる限り、できる時にやる」という心持で行動してください。
20代のころよりも収入が増えているケースが多いと思われますので、以前より節税効果を考慮した運用制度を使うのがよいでしょう。
*月々積立での運用:2万円×約30年・・・教育資金にも充当可
*NISAの活用:まとまった資金(50万円~100万円)で株式運用を始める
*iDeCoに加入:毎月2万円(もしくは満額)×約30年
■40代はまったなし・・・まとまった資金は有効活用を行う
40代の場合は、時間軸で見た場合、より運用を真剣に考える必要があります。
20代や30代のころより、まとまった資産を持っている方が多いので、その分投資未経験者は「一歩踏み出す」のに躊躇される方がいますが、リスクテイク(リスクをとってリターンを得る)を行わない方が、むしろ「リスク」であることを、再認識すべきです。
預金で置いて置くよりはマシ、という理由で、外貨での一時払の保険商品に、銀行や保険会社が勧められるままに加入される方を多く見られますが、一括での外貨のみでの運用は、ベストな選択とは言いがたいところです。外貨は成長資産ではないからです。
この年代では、保有資産額と毎月のキャッシュフローによって、提案が大きく異なりますが、いずれの場合でも成長資産である株式を、50%程度はポートフォリオに組むべきでしょう。
40代とはいっても、現役世代がこれまで「60歳定年」であったところ、今後現役で仕事を続けられる年齢が70歳や、定年という概念がなくなるような将来を考えれば、十分に時間はあります。
また、変化のスピードが速い時代ですから、積極的に情報を取得し、学ぶ姿勢の必要性は、20代・30代となんら変わりありません。
今後、iDeCoの運用期間が60歳以上へ引きあがることを考慮すれば、40歳からでもiDeCoの活用は十分に有効です。
*月々積立での運用:2万円×約20年
*NISAの活用:まとまった資金(100万円~500万円)で株式購入
*10年以内の運用:まとまった資金(100万円~500万円)により債券などで株式よりも安定した資産を作る
*iDeCoに加入:毎月2万円(もしくは満額)×約20年
20代・30代・40代いずれの場合も、自分の資産は自分でつくるという考えを持つことに、変わりはありません。
また、お金という概念が今後20年以降、今と同じ性質や意味を持つかどうかは分かりません。「現預金」以外の資産に変えておくことの他、これまでの固定概念が変わるとき、フットワークよく動けるように、日々経済の動きを見る習慣をつけておきましょう。